神道LGBTQ+連絡会
目次
留意点
- 本件については現在関係各所と話し合いを行っている最中です。今後の正式な対応が確定次第改めて結果のご報告を行います。
- 客観的な事実の記載を心がけてはおりますが、あくまで弊会側から見た経緯となることをお含みいただけたらと思います。
- 李氏個人への不当な批判や攻撃が生じることは本意ではありません。
主な時系列
年月日 | 出来事 |
2023年2月7日 | 李琴峰氏ご本人から祝詞作成の依頼 |
2023年3月31日 | 祝詞作成完了 |
2023年4月6日 | 斎場・神職資格等情報の提供終了 |
2023年4月10日 | 連絡途絶える |
2024年6月27日 | 『言霊の幸う国で』刊行 |
2024年6月30日 | 『言霊の幸う国で』PRにおいて神道LGBTQ+連絡会の名称・祝詞等の使用について発表https://x.com/Li_Kotomi/status/1807363417172238804 |
2024年7月3日 | 弊会メンバーが作中における祝詞等の使用を確認 |
2024年7月15日 | 弊会から筑摩書房へ問い合わせ |
2024年7月16日 | 李琴峰氏より連絡・確認等の不足について謝罪(以降連絡なし) |
2024年7月17日 | 李氏へ返信・宗教差別等への基本的な考えについて送付 |
2024年7月18日 | 李氏の代理として筑摩書房より問い合わせに対しての返信・以降話し合い |
2024年7月26日以降 | 返信停滞中 |
詳細
神道LGBTQ+連絡会では、2023年2月7日より李琴峰氏ご本人から「祝詞を作品に使いたい」との要望を受け、独創性の高い祝詞の作成を行なっておりました。あわせて神事における斎場舗設案や祭典の式次第案等についても別途作成し、Twitter/XのDMにて案を李氏に共有させて頂きました。
しかし、共有が一段落した後から1年以上、李氏からのご連絡は途絶えており、そのような状態の中で2024年6月27日に本書籍は刊行され、2024年7月3日に弊会メンバーが知人からの一報を受けて、本書籍への弊会作成時から一部改変された祝詞の使用を事後的に確認しました。
この時点で、商業出版物への使用についても、更に祝詞内容の改変についても、弊会はもとより著作権保持者本人(弊会メンバー)への確認・連絡・事後連絡がない状態でした。
また、書籍の奥付部分には、
>※神道に関する記述ならびに祝詞の作成は、「神道LGBTQ+連絡会」から助力を頂きました。
とあり、「李琴峰氏が祝詞を作成した」「神道LGBTQ+連絡会が(神道に関して)内容を監修した」の「どちらとも取れる」表現がありました。
弊会はあらゆる差別に反対する立場を取っており、今回の祝詞作成についても当初より「LGBTQ+差別にも宗教差別にも反対してほしい」という要望を李氏にお伝えしておりました。また、これを前提として、李氏からの謝礼のご提案をお断りし無償での協力を行なっておりました。
しかしながら作品本文中やご本人による刊行前後のPRの中には、当方が差別的であるとして使用について注意を呼び掛けていた文言や、偏った考えに基づく表現が多々ありました。
主な問題点
- 商業出版物への使用についても、更に内容の改変についても弊会はもとより著作権保持者本人(弊会メンバー)への確認・連絡・事後連絡が一切ないまま本書籍が刊行されたこと
- そのため、刊行前の確認ができていれば指摘したはずの、祝詞文面の改変・祝詞と祭典の意義の改変が無断で行われていること
例:弊会メンバーが作成した祝詞には句読点がなかったが、掲載されたものには句読点があった。 また、住所も追加され、改行箇所が大幅に変更されている。 祝詞は句読点の有無でも性質が変わり、また改行を含めて祝詞としての表現を行うため、その改変を無条件で容認することはできない。 |
- 上記の祝詞への改変と確認なしの掲載は、我々の信仰を軽んじる振る舞いでもあること
- 更には、祝詞奏上の状況や祈願内容が厄祓いとするに極めて不適切であったために(作品の具体的な展開に触れてしまうので詳述は控える)必勝祈願祝詞として作成した祝詞が、DMのやり取り中に何度も「厄祓いの祝詞でも祈願でもない」と念押ししたにもかかわらず、物語上の表現のために厄祓いの祝詞・祭典として扱われており、これもまた我々の信仰を非常に軽んじる行いであること
- 祝詞以外にも宗教や信仰への差別、また、そのほか各種の差別に加担する可能性のある表現が随所にみられること
「LGBTQ+差別にも宗教差別にも反対してほしい」という条件のもと協力をした連絡会には受け入れ難く、刊行前の確認ができていればやはり祝詞の掲載許可はできなかった。 |
- 奥付にある「祝詞作成の助力」という表現では、李氏が主に祝詞を作成したように受け止められてしまいかねないこと
- 神道や神社に関する初歩的な間違いも散見されるが、これについては確認の手間も省かれたまま発表されており、奥付に弊会の名を記されることで祝詞やその奏上に関係する提案以外の、こと神道に関して全面的に弊会が監修したような印象を持たれてしまうこと
刊行後に著者および出版社へご提案した対応
- 本書籍内で今後も祝詞等の使用を継続されるなら「祝詞の改変を行わない」「該当作品以外に使用しない」などの条件のもと、新たに使用契約を結び直したい
- 本書籍内で今後も祝詞等の使用を継続されるなら、この後弊会から送らせて頂く「差別と思われる箇所」指摘部分について、修正もしくは指摘箇所が差別でない理由についてご説明を頂く必要があろうと考える
- 祝詞等の使用継続を望まないなら、祝詞/斎場舗設案/式次第等について削除をお願いしたい
※作中で描かれる斎場の舗設場所や祝詞奏上のシチュエーション等(作品の具体的な展開に触れてしまうため、詳細な記載は控えさせていただきます)は、創作上の展開に関しての神道での実際の儀礼についてのご質問・ご相談にお答えする形で弊会側から出した案であったことに留意されたい
- 奥付の文面変更について、また出版社からの「お詫び」等の掲載について、今後の使用継続如何に関わらずお願いしたい
- また、公の場でそれらを発表される前に、内容確認のため弊会へ共有をお願いしたい
話し合い中の段階で本経緯書を公開した理由について
当初、今後の正式な対応が確定次第、結果の報告のみを行うことを予定しておりました。しかし、2024年8月下旬頃に弊会との事案とは別件で『言霊の幸う国で』内の描写に関する告発あるいは批判がありました。
それに対する李氏の対応は差別に反対するという姿勢とは相容れないものであり、先述の通り祝詞作成を含めたご協力について「LGBTQ+差別にも宗教差別にも反対してほしい」という点を前提としている弊会としては、宗教差別を含む様々な差別を内包していることを容認したうえで本書籍の作成に協力をしたわけではないことを表明しておく必要があると考えました。
また、宗教とLGBTQ+という交差性を持つ弊会の主張や批判が公の場において議論されることになった場合に増加する恐れのある、「宗教=悪」「『過激』なクィア」というような認識を(時に無自覚の)前提として発せられる様々な発言は、弊会の「祝詞使用の手続き上の不備などの対応をしてほしい」という正当な主張の妨げになると同時に、各種の(特定の)信仰を持つ者やLGBTQ+当事者が多くの差別言説を浴びる環境を作り出す恐れがあるため、発表する適切なタイミングを伺っていました。
本経緯書をお読みになる皆さまにおかれましては、様々な信仰者・LGBTQ+当事者が置かれている被差別的状況に関して、意識を向けていただけたら幸いです。
そのほか留意点
- 宗教や信仰に関するものに限らず、専門知識を必要とする協力/監修を受けたのであれば、その完成品の確認を協力者/監修者が行なえるよう、刊行前に連絡を行なうのが真っ当なものづくりのあり方であると、弊会は考えています。
その過程を著者および出版社が怠ったことは、弊会の主張する作中内表現の差別的事項の存在およびそれらを作者(や読者)がどのように受けとめているのかとは関係なく、批判が可能なものと考えています。
- やり取りが始まった直後の2023年2月11日から、情報引き渡し直後の4月7日まで、弊会メンバーとのやりとり内における李氏の宗教差別的言動に対して指摘を行なっています。この時点では、反差別を表明され活動を続けられている方であることをふまえ、時間を掛けて認識改善されることもあろうとの期待も持っていたため、また中断されている使用許諾については本格的な使用の前には改めての確認が当然行われるはずとの考えから、連絡が途絶えた後も成り行きを見守っていました。
しかし、結果として引き渡し完了直後に連絡が途絶え、かつそのまま最終的な使用許可なしでの刊行がなされたことは、「宗教や信仰への理解はしたくないが、祝詞等を含めた宗教的事柄は物語のために使用したい」という、宗教や信仰を軽んじる考えが前提にある振る舞いに思えます。
- また、2024年7月15日以降に生じた三者間でのやり取りにおいて、弊会メンバーのSOGIや犯罪被害・差別被害に関する情報が本人の同意なく李氏から担当編集者へと伝達されました。こちらに関しては、該当メンバーの受ける負担を考慮し現時点ではこれ以上の詳細を明かすことは避けたいと考えておりますが、別途対応を協議しております。
- 上記に関して、李氏より最初にDMを無断で筑摩書房に送付したのは弊会側であったとのご指摘がありましたが、弊会が筑摩書房に共有したDMはなりすましではないと示すために事務的なやり取りの冒頭のみを切り取ったものです。個人のセンシティブな情報の無断での伝達と同列に扱うべきものではないと考えております。
- 最後に、弊会としては本書刊行元の筑摩書房にも対応を求めたいと考えております。上記の問題点のいくつかは、担当編集を筆頭に出版社としての各種役割を適切に果たしていないことにより生じたものであり、その責をすべて李氏ひとりに負わせるべきものでもありません(李氏が各種問題点を認識・理解していなくとも、刊行前の最終確認などを出版社が行なっていれば防げた事象もあるものと思います)。弊会との間に起きている事象のみならず、先述した別件の事象に関しても刊行元としての責任を果たしているとは言えない状態であると考えております。
なお、「本件において連絡すべきだったのは筑摩書房や担当氏でなく李氏であり、責任の所在は李氏お一人であるとお考えか」と筑摩書房に問い合わせたところ、「この件についての責任の所在は李氏にのみあると考えます」という返答を受けました。
2024年9月6日付けで公開された李氏のnoteを受けての追記
以上の経緯書を準備中に、李氏より下記のnoteが公開されました。
【声明】神道LGBTQ+連絡会の「こぼね」氏による「無断使用/改変」のご指摘について
以下はそこで書かれていることを受けての、あらためての経緯説明となります。
※太字部分は李氏作成のnoteからの引用です
- 「祝詞の完成・査収後、私は「こぼね」氏に、「書籍化の際に『神道LGBTQ+連絡会』をクレジットする」と承諾しました。「こぼね」氏もこれを了承しました」とありますが、これは2023年3月23日時点、上記時系列では祝詞作成完了よりも前の段階であり、最終的な使用許可ではありません。
- 「無断改変について」と題された章内において、李氏は「「無断使用」と「無断改変」は、事実無根か、事実を誇張した言いがかりにほかなりません」と結論づけていますが、上記で説明しているように、祝詞は句読点の有無や改行の位置も含めて「意味」を持っているため、それを相談なしに修正することは、祝詞を信仰上の重要な要素として考えている者としては容認できることではありません。
仮に適宜句読点を入れることや改行の位置を修正する必要があり、それが「文筆の専門家」による適切なものであったとしても、その修正は、作成者であり「神職であり宗教の専門家」と李氏が認識されている弊会メンバーを除外して行ってよいものではないと考えます。
祝詞という形式に限らず、例えば一般に知名度の高い短歌や俳句、また本書籍のタイトルの元になったであろう万葉集1巻5-894 山上億良『好去好来の歌』を例に挙げても、他者が作成したものへ改行や句読点の無許可の追加という「それだけ」でしかない(と李氏にとって思われるような)変更を加えることによっても、その表現形式や意図や意義が根本から破壊されかねないというケースが多くあることを、文筆の専門家を名乗られる李氏もご存知であるはずと思います。
なぜ、祝詞という形式に関してだけ、「そのままでは使えない」と判断されたのでしょうか。少なくとも、そのような(李氏にとっては些細なものでしかなかったとしても、信仰者にとっては重要な)変更を行なっていることが弊会に共有されないまま本書が刊行されてしまったことは、明らかに手続き上の不備ではないでしょうか。
- さらに李氏がnoteにご自身で公開された比較画像では、書籍に掲載された祝詞のみに住所に関する語が追加されていることもお分かり頂けるものと思います(祝詞には住所氏名等の書き方においても様々なルールがあります)。「読み比べると分かるように、内容は一字一句変わっていません」と李氏はnoteで断言されていますが、明確に事実に反する記述です。
- 奥付にある「祝詞作成の助力」という表現では責任の所在が曖昧になり、李氏が主に祝詞を作成したように受け止められてしまいかねないという問題について先述していましたが、この点は李氏のnoteでも「査収した祝詞の原稿は、Wordファイルベタ打ちで、句読点がなく、改行もばらばらの状態のものでした。書籍や文芸作品にそのままでは使えない状態でした」「文筆の専門家は私です。読み物として読みやすいようにフォーマットを整えるのは私の仕事だと考えました」と、李氏が祝詞を完成させたような書き方がなされています。
word形式の受け渡しを指定したのが李氏だったことはさておき、李氏は本書籍の主要な参考文献に瓜生中著『よくわかる祝詞読本』を挙げていますが、こちらの書籍のどこにも、というよりも現在一般に流通する神社神道系の祝詞教本の多くでは祝詞作文における「適切な句読点の打ち方」等が記載されることはまずなく、神職等の資格取得にあたり求められる祝詞作文法においても祝詞に句読点を挿入する指導がなされることはほぼありません。そもそも祝詞は、基本的に宣命書きを用いるものです。
こちらの書籍には句読点のある祝詞も存在しますが、これも祝詞教本・例文集という特性上、掲載された祝詞が実際に奏上される際には別途宣命書きで清書が行われること・そのままで奏上されるのでなく例文を参考に新たに自作されることなどを前提として補助的に用いて表記された結果であると思われます。
我々が作成した祝詞は例文でなく、使用される状況からも句読点や改行の追加・変更は非常に不適切です。李氏はどのように「専門書を参考に、形を整え」られたのでしょうか。専門家によって作成された祝詞を添削・修正できる程度に祝詞作文を習熟なさっているならば、何故我々に作成を依頼されたのでしょうか。
- また、弊会メンバーのひとりが上記事象についてSNS上で批判を行なったことに対して、「本来は話し合いで妥協点を模索できたはず」と李氏は言及していますが、本来話し合いで妥協点を模索できたはずのものは「祝詞に作家による修正を入れてもよいのか」や「作中内に宗教差別的な表現がありながら祝詞を使うこと(弊会からすると提供すること)の是非」であり、それらはすべて刊行前にしかできなかったはずのものです。
李氏は刊行後の経緯に対して重きを置いているように思えますが、弊会は刊行前の経緯=各種の必要な話し合いがなされないまま刊行されたことこそ重要な論点と認識し、批判を行なっています。
- それらの話し合いを2023年4月の段階から拒否してきたのは李氏であり、加えて奥付部分において弊会の協力があったことが最終的な許可なく記載されている本書が既に刊行されてしまった現状においては、対等な関係性での話し合いは事実上不可能だとも考えています。
本書を読了した方にとっては、以上のような経緯は弊会と李氏が公開した経緯を読まなければ知り得ないものであり、弊会が協力をした(≒本書内の各種記述に対して賛同していること)という認識を読者が持ってしまうことは、避けられないことでもあります。
弊会は確かに協力をしましたが、祝詞の使用や奥付への記載に関しての最終的な許諾は確認されておらず、あくまでも2023年4月10日までの協力であったことをここにあらためて記しておくと同時に、本経緯書および弊会メンバーによる事情説明が急を要する事態であったこと、李氏の代理という立場でありながら弊会から送付した宗教差別に関する考えをまとめた文書についての言及もなく論拠も具体性も示さずに「基本的に特段に差別的な意図に基づくと思われる表現はなく、一般的な表現の自由の範囲内と考えております」として、差別指摘について更なる説明を弊会側のみに求めたまま、事務的な手続きについてまでも判断を保留にし連絡が停滞している筑摩書房とのやり取りの完了を待つ余裕のない状態であったことを、ご理解いただければ幸いです。
- また、李氏とSNS上でやりとりをしている弊会メンバーが祝詞作成者本人ではないことに関しても、以下のような理由があることをご留意願いたく思います。
・SNSによる発信を行なうかどうかは(本件に関係なく)個々の自由であること。 ・宗教や信仰への差別、またLGBTQ+への差別が横行している現状において、自らが(なんらかの宗教の)信仰者であることを明かしながらLGBTQ+当事者としてSNSにて発信を行なうことは、時に非常に苦痛を伴うものであるということ。 |
- 李氏のnoteには「依頼にあたって、私は「こぼね」氏のみと、TwitterのDMのみでやりとりをしました。「こぼね」氏を含め、「連絡会」のメンバーの素性や個人情報を、私は一切把握していません」とありますが、李氏は窓口となったメンバー以外にもDMを通して数人のメンバーと交流しているため、この記述も正しくありません。
- また、その交流の中で、窓口になった者を含む複数のメンバーのSOGIを尋ねられる場面や、他のトランス(特に女性)の存在の有無、例として出した犯罪被害がどのメンバーの体験かなどを掘り下げられる非常に危ういシーンが多くありました。
これに関してはアウティングへの対応として別途協議中ですが、これらの情報は交差性を持つマイノリティにとっては容易に個人の特定に繋がりうるセンシティブなものであるということ、そして我々が常にこういった好奇心の対象となり続けていることにもご留意頂きたいと願います。
そして、そういった(本来ならば引き受ける必要のない)差別や加害、搾取や消費についてどれほど耐えうるかは個々の事情により異なります。
以上の理由から、2024年9月1日に弊会メンバーのひとりがSNS上にて連絡会としてではなく個人アカウントにて発信を行なう運びとなりました。ご理解いただけますようお願いいたします。
(2024年9月14日)
9月22日追記:筑摩書房・李琴峰氏に要望書を送付しました
2024年9月22日付で、神道LGBTQ+連絡会より筑摩書房・李琴峰氏に対し、
- 無断改変/無断使用という手続き上の不備に加え、「LGBTQ+差別にも宗教差別にも反対してほしい」という弊会協力の前提条件が現在守られておらず今後も守られる可能性が極めて低いと判断したため、『言霊の幸う国で』における祝詞等の使用停止を求めました。
- また、本件に関するやり取りの最中に弊会の複数のメンバーのSOGIや犯罪被害等の情報を含むDMが当人たちの許可なく李氏から筑摩書房に渡された件につきまして、改めて筑摩書房側からの説明を求めました。
下記にその要望書を掲載いたします。
なお、内容につきまして、取り扱いに注意を要すると判断した部分に関しては、この場での公開は控えさせて頂きます。
今後もこちらへ追記する形で、結果のご報告を行います。
2024年9月22日
神道LGBTQ+連絡会
—(以下送付内容)—
筑摩書房 御中
お世話になっております。
神道LGBTQ+連絡会ではこの度、李琴峰著『言霊の幸う国で』につきまして、李氏が公開されているnoteの内容(https://x.com/li_kotomi/status/1835028976995340388?s=46&t=W6JFOp-IuiLQhD_im3POJQ)
および関連するSNS投稿等の内容に基づき、
「LGBTQ+差別にも宗教差別にも反対してほしい」という当方からのご協力の前提条件が現在守られていない、そして今後も守られる可能性が極めて低いと判断いたしました。
そのため、弊会からお渡しした祝詞・式次第・斎場舗設案等の使用停止を求め、ご連絡いたします。
これに伴い、弊会から改めて以下の要求を申し上げます。
- 弊会よりお渡しした祝詞等の使用を行わないこと。
- 使用不許可にあたり、 今後は『言霊の幸う国で』の販売は市場在庫を除き停止すること。
- 今後の市場在庫以外の販売は、祝詞および祝詞奏上に関連する場面を削除した改訂版で行なうこと。
- これらについて、筑摩書房として公式に経緯等の発表を行うこと。改訂版を刊行される際はそちらにも記載して頂くこと。
- 公式発表および改訂版の刊行前に、確認のためその内容を弊会に共有して頂くこと。
*2の要求に関しては、弊会としては「現時点で市場にある在庫の回収および現行版の販売停止」も検討しましたが、書店現場等の混乱や負担も鑑み、譲歩した要求となっております。
本件は、本来であれば「協力者(=弊会)への確認を怠ったまま無断で改変・使用・刊行した」という事態が7月に発覚した時点で使用不許可を求めることができるはずの案件でしたが、李氏と貴社に相応の状況改善のお気持ちがあるならばと、事後の謝罪・交渉に応じました。
しかしながら、その場においても筑摩書房ご担当氏・李氏は、7月中旬の弊会宛連絡の中で上記手続き上の不備を認めながらも弊会の要望へ即時対応することなく、李氏のnoteで述べられているように、祝詞を無断で改変し使用したのは事実だが、『無断改変・無断使用』は「事実無根」の「言いがかり」という旨の矛盾した主張を行い続けています。
また、
- 「基本的に特段に差別的な意図に基づくと思われる表現はなく、一般的な表現の自由の範囲内と考えております」(2024年7月18日筑摩書房より)
- 「貴会の考える「差別と思われる箇所」のご指摘をうけて、修正なり「指摘箇所が差別でない理由」の説明なりの対応を考えています」(2024年7月26日筑摩書房より)
と、「自分たちの表現が差別的か否か(弊会が作家・出版社を納得させられるか否か)」によって弊会への対応を変える、という通達を行いました。
自らの行いに差別があったと認識している者に修正の手助けを行うことと、自らの行いに差別はないと信じ込む者を「説得」することは、本質的に異なる行為であり、後者は特に当事者にとって非常な苦痛と困難を伴うものです。
7月の対話開始時点において、李氏・筑摩書房として判断すべきは
- 「連絡会の指摘する宗教差別について学び、理解し、それらを作品に反映させたうえで祝詞を使用する」
- 「連絡会の主張は自分たちの信条とは相入れないと判断し、祝詞の使用をやめる」
このどちらかであり、弊会からの「宗教差別的な箇所の指摘」のご提案はあくまで使用継続される場合での更なる協力の意図でしたが、これに対して自分たちからは使用継続・不継続の意思を示すこともなく「まずは説得せよ」と、無断改変・無断使用の問題さえ差別問題の一部のようにすり替える筑摩書房の対応は非常に問題があるものと思われます。
またこれらによって事態が膠着し、内々に済ませることが難しくなったために弊会が公の場で発信せざるを得なくなったことについて、その責任をこちらに被せた上で、無断改変・無断使用は「細かい手続き的な瑕疵(上記noteより)」と更に事態を矮小化する李氏の対応も看過できかねるものと考えます。
そして改めての指摘になりますが、
- 「連絡会の指摘する宗教差別について学び、理解し、それらを作品に反映させたうえで祝詞を使用する」
- 「連絡会の主張は自分たちの信条とは相入れないと判断し、祝詞の使用をやめる」
この判断はそもそも、本書刊行前=制作期間中にすべきことです。判断を保留したまま事前の連絡も一切なく刊行してしまったこと、更には現在に至っても判断を保留したまま居直り続けていることは、「刊行さえしてしまえば後々何を言われても押し通せる」と、協力者を軽んじる態度であると感じざるを得ません。
そしてこの度、李氏はご自身のnote内で、
>「私は「神道LGBTQ+連絡会」と「こぼね」氏による「宗教差別論」に全面的には賛同しません。賛同した覚えはないし、賛同すると約束したこともないし、これからも賛同しません。」
と明言され、またSNS等では宗教差別について弊会の主張を「差別製造」などと評されました。(https://www.threads.net/@kotomi_li/post/C_-XfbzBTVH/?xmt=AQGzzl2b2GXSmlQS7VF7noeL90c_RvfaV9JfQX-IJc69BA)
これらを受け、弊会は、弊会が求めてきた「LGBTQ+差別および宗教差別への反対」という前提条件に対する、李氏からの明確な拒否であると判断します。
同note内においては、李氏は弊会がこれまで発信してきた宗教差別についての意見とは無関係の言説を、弊会の意見であるかのように例示されています。
弊会への賛同可否の根拠としてこのような言説を例示し意見を表明する意図が分かりかねますが、「LGBTQ+差別および宗教差別への反対」は、常に我々からのご協力の条件として最重要かつ最低限の前提であり、ご本人は後から弊会の主張を知ったと主張されていますが、弊会はやり取りの最初からこれを提示し、
これまで李氏からの
(ここからの内容は、既に李氏によってDM内容が筑摩書房側に渡っていることを前提として記載します)
>【DMの内容のため公開を控えます】(2023年2月7日李氏DMより)
>【DMの内容のため公開を控えます】(2023年2月7日李氏DMより)
>【DMの内容のため公開を控えます】(2023年3月27日李氏DMより)
>【DMの内容のため公開を控えます】(2023年4月3日李氏DMより)
等の誤った・偏った発言に対しても、その考えに基づいてDMの中でも何度も指摘を行なってまいりました。
また、政治行為と宗教の無用な紐付けに対しても、
弊会は李氏の
>【DMの内容のため公開を控えます】(2023年2月8日李氏DMより)
という主張に対し、
>【DMの内容のため公開を控えます】(2023年2月8日弊会窓口DMより)
などの指摘を行ってきています。
弊会がこれまで李氏に行った批判は、現代の神社職員、宗教・信仰・神話・神道に対して誤解と悪感情に基づく偏りある表現が多用されていること、祝詞や祭祀儀礼の意義の捻じ曲げや改変などについてです。
特に「厄」「厄祓い」に関する誤解や、お渡しした祝詞が厄祓い祝詞ではない点については、何度も繰り返し説明させて頂きましたが、これらについては聞き入れられないまま本来と違う意図や意味のものとして作品に使用されています。
そのことへの批判に対する返答や、
作中やPRで使用される
>「発想自体が馬鹿馬鹿しく、ほぼ信仰に近いものである。」(『言霊の幸う国で』p.362)
>【作品内容引用を最小限にするため公開を控えます】
>「3つの神話・虚構に喧嘩を吹っかけている」(https://fedibird.com/@Li_Kotomi/112675927125088827)
>「3つの神話を社会が強固に信仰しているからこそ、私たちは受難してきた」(同上)
などをはじめとする多くの偏った表現に関しての説明・反論でさえなく、
>「とりわけ聖典や教義そのものに差別が刻み込まれたような宗教ならばなおさらです。」(上記noteより)
のように、
本来ならば具体的な箇所への言及と解釈の根拠を明示すべき教義・聖典等の批判について、そもそも共通の教義・聖典というもの自体が存在しない神道の者に対しこれを持ち出し批判するという行いをされている現状は、
差別に反対するどころか様々な宗教/信仰を無用に混同させスティグマを生むヘイトスピーチを行っている状態であり、宗教/信仰に対し非常に侮蔑的かつ差別的な態度であると思わざるをえません。
こういった批判に向き合わず、前提を理解しないまま、あるいはそもそも我々が最初に出した前提を満たす気もなく、「賛同した覚えはない」という考えを黙ったままで利用していたということならば、それは祝詞等の無断使用や無断改変と同様に、弊会やその信仰を軽んじる行いであり、あまりに侮辱的な扱いではないかと思われます。
以上により、「弊会の祝詞等の使用を許可しない」が、弊会としての最終的な結論になります。
なお上記noteでは本件に無関係な方の個人名なども挙げられていますが、弊会や本件に無関係な方や事象についてみだりに取り上げることは、本件に関しては混乱と無用な紐付けを生み、引き合いに出された方には大変なご迷惑となるため、厳に慎んで頂きたいと願います。
また、別件として、弊会の複数のメンバーのSOGIや犯罪被害に関する情報を含むDMが、本人の同意を得ずに李氏から筑摩書房へと共有された件につきましても、当然にその後のご説明があるものと思いお待ちしておりましたが、現時点まで連絡がございません。(この度のメールのやり取りにおいて、最後にご連絡したのは弊会側であり、筑摩書房側からの返信はなかったものと認識しております)
李氏はこれについては、「SOGIや犯罪被害に関する情報」というこちらの指摘内容を「名前や住所等の個人情報」にすり替えた上で全否定する主張を上記noteで展開しています。
しかしながら、2024年7月26日に行われた筑摩書房との公的なやり取りにおいて、筑摩書房担当氏からは
>「個人のセクシュアリティに関する情報があるので、
私以外には見せないでほしいとのことでした。」
と、李氏からセンシティブな情報であることを前置きされて(しかし我々の許諾は省いたまま)DMを渡されたという証言を得ています。
- 李氏が情報を有していたこと
- 李氏が情報がセンシティブなものと認識していたこと
- 李氏が(本人の許可なく)センシティブな情報を含むDMを筑摩書房へ渡したこと
このいずれも、否定できる根拠はないものと思われます。
しかしながら、李氏は指摘を受けた後も、更に
>「場合によってはDMを公開する必要があると考えています。」(https://x.com/li_kotomi/status/1830400185291386885?s=46&t=W6JFOp-IuiLQhD_im3POJQ)
と問題のDMを再度公開する意思を示し、それについての抗議に対しても、
>「何がやってよくて何がやってはいけないのか、私はこぼね氏よりずっとわきまえています。」(https://x.com/li_kotomi/status/1830456508217450547?s=46&t=W6JFOp-IuiLQhD_im3POJQ)
と、既に一度情報を流出させている事態を認めないまま、今後も該当のDMの公開にあたって本人たちに同意を取る意思はないと示しています。
センシティブな情報の取り扱いは、当事者の尊厳と生命の安全に直結する重要な問題であり、細心の注意を払って行うべき事柄であることは、本作中で一橋大学アウティング問題を取り扱った李氏・筑摩書房ならば当然に理解していて然るべきと考えます。
そして、その上でこういった行為の仄めかしを行うことは、自己情報コントロール権の侵害であり、当事者にとっては脅迫に等しいものであると思われます。
本件についても、改めての説明を筑摩書房側より求めたく願います。
以上について、何卒ご対応のほど、よろしくお願い申し上げます。
2024年9月22日
神道LGBTQ+連絡会